あなたの心に少しの灯をともす本屋 BOOKS ROUTE 193です。どうぞゆっくり見ていってください。
今日ご紹介する本は、「自分の小さな箱から脱出する方法」です。
【自分を正当化している時、人は自分の箱の中に入ってしまっている】
日常生活の中で、誰かに対して不満を持つことや、それが大きくなって怒りの感情を持つことは誰にでもあるものだと思います。
それは「その誰か」に原因があると思いがちですが、著者は不満や怒りを持つ本人こそが「箱の中に入った状態」になってしまっていると言います。
人は誰しも相手に対して不満や怒りを持つとき、「自分が正しい」「自分が一番」「自分は被害者だ」という思いを持っているらしいです。
僕はそこまで明確にその言葉を意識したことはないんですが、それでも怒りの感情の裏にはそういった思いが隠れていそうな気もします。
つまり、自分の箱に入った状態。
その状態になると人間は、自分を偽り、自分を正当化しようとします。
過去のエピソードからその人の悪行を結びつけたり、偏見の目で自分に都合の良い側面だけを見たりといった具合にです。
本の中で印象的だったシーンがあって、母親がいつも言うことを聞かない息子に対して、「22時までに帰ってきなさい」と言います。
その後、車が帰ってきて、時間を見ると22時少し前。
母親は息子が時間を守ったことに対して見直したり褒めたりしたでしょうか?
結果は違って、「もう少し早く帰って来れないの!?」とさらなる不満をぶつけただけでした。
これはどういうことかと言うと、自分の箱の中に入ってしまった時、相手に対して求めることは、事態の改善よりも相手を責めている「自分を正当化するための行動」ということになるのです。
とんでもないですよね。
先程の場合で言うと、早く帰ってくるよりも、帰りが遅くなって「ほら、やっぱり私が言ったように時間を守らない!22時までに帰ってきなさいと言ったじゃない!」と、言うことを聞かない息子を責めた自分は正しかったと証明される方でなければいけなかったのです。
だから、早く帰ってきた息子に対して、なんとか自分を正当化しなくちゃいけないという思いからあの言葉が出たのだと思います。
職場で「使えない」と思っている人がいい仕事をしたり助けてくれたりした時、素直に感謝できたり尊敬できたり出来ますか?
いつも不満を持っている家族が良いことをしてくれた時、素直に喜べていますか?
問題がある人は、往々にして自分自身に問題があるということが見えなくなっています。
もし不満や皮肉を口にしていたとしたら、あなたは箱の中に入っている可能性が高いと思います。
【不満や怒りが爆発するのは、自分を裏切ってその自分を正当化しようとしているから】
考え方や価値観の違う人同士が暮らす世の中で、他人に対して不満や怒りの感情を持たないで生きてきた人なんていません。
それ自体を無にすることは絶対に不可能なんです。
しかしそれでは、いつまで経っても誰かにイライラし、不平不満を言いながら箱の中から他人を見て、自分を正当化するような行動を相手に求め続けるので何もうまくいきません。
そのためにも、箱から出る方法を知っておく必要があります。
怒りの感情を持つと人は自分の箱に入り、「自分が正しい」という思いを抱くと先程言いました。
箱から出るための方法は、その「自分が正しい」という思いを疑い、訂正し、なくすことです。
つまり、「自分に非はなかったか」と確認するのです。
人は箱に入るとき、次の段階を踏むと本書では書かれています。
- 自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動(自分への裏切り)をとる
- 一旦、自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。
- 周りの世界を自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る視点が歪められる。
人は不満や怒りの感情から自分の考えや行動を正当化し、相手に求めるものが歪み始めるのですが、不満や怒りを持つ段階で実は「自分を裏切る」という行為をとっているのです。
裏切る行為とはどういうことか。
例えば誰かが皿を割ったとき、「何やってるんだ!使えねーな!」という怒りが出たとします。
そのとき、本当はどうしたらよかったと思いますか?
皿を割った人に怪我がないか心配したり、持ち方が悪かったのであればアドバイスをしたり、置き場所が悪かったのであればそれを見直したり。
怒る前に、「本当はこうした方がいい」という行動がいくつかあるはずです。その「本当はこうした方がいい」という行動を取らずに怒りの感情という真逆の感情を持つことは、自分を裏切る行為になります。
怒りや不満は誰もが持つ感情ですが、本当は優しくしたり相手の気持ちを考えたらよかったという行為をしなかったことで、自分をさらに正当化するために自分を正しく、相手を間違った奴だと認識を強め、さらなる怒りや不満に繋がるんです。
- 教え方が悪くて伝わらなかったか?
- 相手を萎縮させてなかったか?
- 曖昧ではなくはっきり伝える努力をしたか?
など、自分に非がなかったかを考え、さらに相手の事情や気持ちなどを察してみる。
そうすれば、自分だけが正しいという認識はなくなっていき、自分も相手もともに改善していこうねっていう建設的な前進に繋がるはずです。
【胸に残った言葉】
「相手が箱に入っていることを責めたりせずに、相手の箱の存在に気づけたなら、その方がずっといいと思わないか。結局のところ、こちらもときには箱の中に入ってしまうのだから箱の中にいるということがどういうことなのか、感覚的にわかっている。さらに、箱の外にいさえすれば、箱の中にいるのがどういうことか頭でも理解できる。それにこっちが箱から出てしまえば、相手がひどい奴である必要はなくなり、相手をひどいやつにする必要もなくなる。」
【自分の小さな箱から脱出する方法 商品情報】
著者:アービンジャー·インスティチュート
出版社:大和書房
発売日:2006年10月19日
価格:1600円(税別)
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