「部下が育たない。仕事は教えたんだけど、自分で考えて動いてくれないし、向上心も感じられない。どうしたら人は育つのだろう?」
部下の育成で悩んでいる方は多いと思いますが、育たない原因は上司の教え方にもあるのかもしれません。
仕事を教えているつもりの上司の多くは、実は仕事ではなく作業の仕方しか教えていません。
作業の仕方を教われば作業は出来るようになります。しかし、それだけでは自分の頭で考えて仕事をすることはできないですよね。
では、仕事を教えると言うのはどういうことなのでしょうか?
仕事を教えるというのは、「仕事に必要な思考ツールを教える」ということです。
問題発見、課題解決の思考ツールを与えることで、部下は自分自身の力で成長するようになります。
この記事では、自分の頭で考えて仕事が出来る部下の育成方法をお伝えします。
仕事の教え方は確実に変わってきています。今までの教え方では良い部下は育ちません。
良い部下を育てるためにも、まずは教える側のみなさんがアップデートをしましょう。
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【部下育成のために上司が心がけること】
作業を教えることが仕事を教えることだと考えている方はいまだに多くいます。
しかし、今の時代の正しい部下育成方法は作業を教えることではありません。
数十年前までは、言われた作業をするだけでも特に問題ありませんでした。
高度経済成長期からバブル期の日本においては、とにかく作業をこなしてモノを作れば売れる時代だったからです。
作業方法を教わって、何も考えずに作業をしていれば仕事になっていました。
しかし、現代の日本経済ではそうはいきません。今はモノが売れない時代であり、成果の出る施策を考え抜かなければなりません。また、仕事においての効率化も求められる時代です。
- 顧客のニーズは何か?
- 最適な販売、広告チャネルは何か?
- どうすれば顧客の購買心理を刺激するPRが出来るか?
しかし、社会に出たばかりの部下は仕事の考え方など何もわかっていない状態です。学校やアルバイトでは、ビジネスについてほとんど教わることがないからです。
・業務プロセスを効率的に改善するにはどのような考え方をしたら良いか
・生産性の高い人間になるにはどのような考え方をしたら良いか
こうした仕事に必要な考え方は上司の皆さんが教えてあげなくてはいけません。
教えなくてはいけないというと「自分で勉強しろ」と思われるかもしれません。だから育たないのです。
仕事のできる人間を育てたいと思うのであれば、仕事で使える考え方を教えましょう。
作業ができる人間で良いのならば、マニュアルで細かく指示すればその通りに動く人間は出来上がります。
しかし、求めているのが「自分で考えて動き、生産性を上げてくれる人間」なのであれば、仕事の考え方を教えてあげなくてはならないのです。
【育成のポイントは作業を教えることではなく仕事のやり方を教えること】
部下に仕事を教えるとき、皆さんはどういったことを教えていますか?
必要な業務内容を教えている方もいれば、仕事の意味などを教えている方もいるでしょう。
私も部下側と上司側の両方をいろんな職場で経験し、様々なアプローチ方法に出会ってきました。
私の出会った多くの上司は、仕事の仕方ではなく作業の仕方を教える方でした。そして、「あとは自分で考えろ」というタイプだったのです。
しかし、考えろと言われても、何を考えたらいいのかすらわかりませんでした。
本来、物事はゴールから逆算したり、課題を細分化するなどのプロセスを経てアイディア出しに移るものです。
仕事についても、目標から課題を発見し、アプローチする必要があります。
ですが、当時の私はそうした考え方の流れを無視して物事を考えようとしていました。
そのため、なかなか良いアイディアも出せず、思いついたとしても効果の薄い的外れのアイディアばかりになっていました。

「売上を上げる仕事をしたいけれど、何をどのように考えたら良いかわからない。がむしゃらに思いつくことをやるしかないのか?」
そういう悩みを抱えていたのです。
仕事ができない人間のままで良いと思っている人はいません。できるなら仕事のできる人間になりたいと誰もが思っているのです。
しかし、仕事ができる人間になるために何をどうしたら良いかわからないという人が大勢いるます。
「基本的な作業を覚えたら、あとは上司の働きを見て学ぶなり自分で考えるなりして成長するしかない。」
これは、現在上司をされている方が若い頃に言われた言葉でしょう。そして、自分なりに考えて行動し、今の立場に登ってこられたと思います。
しかし、その教え自体が今より生産性の低い時代の古いものです。自分がそう習ったからといって同じように教えていては今の時代に必要な人材は育ちません。
作業を教えるのではなく、仕事ができる人間になるための思考ツールを教えてあげましょう。思考の仕方が仕事の土台となって部下は育っていきます。
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【部下が自分の頭で考えるようになる思考ツール】
良質な仕事をするためには、良質な思考が不可欠です。そしてビジネスの世界には、良質な思考をするためのフレームワークがすでに数多く存在しています。
こうした思考ツールを使うことがビジネスの基本です。
世界的な大企業やコンサルティングファーム、優秀な人材を多く輩出するIT系ベンチャー企業などでは、はじめに思考ツールを教えることから始めます。
思考ツールを与えることで迅速に課題の発見や改善に着手できます。また、その正確性も高いものになります。
上司であるみなさんは当然のように使えている思考のフレームワークも、部下にとっては知らない考え方かもしれません。
何を考えたら良いかわからないという方が多いのは、問題への取り組み方を知らないのです。
つまり、思考ツールを持っていないから考えられない。それならば、はじめに思考ツールの使い方を教えてあげることで、部下は自ら考えて行動できる人間になります。
思考のためのビジネスフレームワークは数多く存在しますが、その中でも思考の手助けとなる考え方を紹介します。
こうした考え方を教えることが仕事を教えるということです。
・思考ツール1:「now where分析」
いま何が問題なのかを認識することが問題解決の第一歩です。そこで使うのが「now where分析」という思考ツールです。
「now where分析」のnowは現状、whereは目標です。問題を把握する方法は目標と現状のギャップはどこかを認識することです。
now where分析を使えば、こうなりたい、こうしたいという目標に対し、現状はどうなっているかを認識できます。
それによって解決すべき問題点を洗い出すことができます。
・思考ツール2:「ロジックツリー」
問題点が見つかれば、次はロジックツリーを使っで問題を細分化する方法を伝えましょう。全ての課題は細分化することで問題の本質にたどり着くことができます。
ロジックツリーとはツリーと名のつくとおり、幹となる問題があって、その枝葉となる要素を確認するためのツールです。
ビジネスフレームワークの中で最も重要な考え方の1つだと言えます。多くの問題はロジックツリーで考えることが基本となるでしょう。
ロジックツリーには、
・Whyツリー
・Howツリー
・KPIツリー
などの種類があり、考えたいことについて適切な方法をとることが重要です。
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【自分で考える部下が育つ指導術|課題へのアプローチ方法を教えよう】
ロジックツリーで問題を細分化し、解決すべき課題がピックアップできれば、次は改善のためのアイディアを出す段階に移ります。
なんとなく考えていても良質なアイディアは出てきません。アイディア出しについてもフレームワークを使うことで良質な改善策を見つけることができます。
ここではおすすめのアイディア発想法を7つ紹介します。
・ブレインストーミング
アイディアを思いつく限り書き出してみる方法です。10個や30個などちょっと多めの数を設けて、そこまで出し切ると決めることで常識を外れるアイディアが出て来やすくなります。
・アイディアの掛け合わせ
実は新しいアイディアの多くは、既存のアイディアを応用したものや他のアイディアと掛け合わせたものなのです。
ブレインストーミングで出したアイディアを、単体ではなく掛け合わせて考えることで新たな発見を得る。それがアイディアを掛け合わせるという考え方です。
・マンダラチャート
(参照:マンダラチャート)
3×3の9マスで構成されるフレームワークです。目標を中心に添えて、その達成のために必要な要素を8個書き出します。そしてそれぞれの要素を達成するために必要な要素をさらに8つ書き出すというものです。
メジャーリーガーの大谷翔平選手や菊池雄星選手が使っており、目標達成と問題解決の最強ツールとして知られます。
・オズボーンのチェックリスト
(参照:オズボーンのチェックリスト)
アイディアを考える上でのヒントとなるのがオズボーンのチェックリストです。
拡大、縮小、代用
置換、逆転、結合
の9項目で考えてみます。
USJがジェットコースターを逆向きに走らせる「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ〜」を作り話題になりました。あれはもしかすると、既存のジェットコースターを使って新しいアトラクションにするために「逆転」の考え方を使ったのかもしれません。
他にも、カフェと本屋を「結合」したブックカフェや、家をホテルに「転用」したAirbnbのように、オズボーンのチェックリスト的な思考で生まれたヒット商品・サービスは数多くあります。
自分の中から出せるアイディアには限界があります。こうしたヒントを知っていることで、違う視点から解決方法を見つけることができるようになります。
・カスタマージャーニーマップ
(参照:カスタマージャーニーマップ)
何事においても、相手視点で考えることは非常に重要です。目線を変えることで自分の思考の範囲では気付けないことを発見できます。
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動・思考・感情の動きを考えることで、適切なアプローチ方法を考えるフレームワークです。
ビジネスにおいて「顧客目線」を持つことの重要性が叫ばれますが、具体的にどう考えたら良いかわからない人も多いです。多くの場合、自分の思いついた考えを無理やり顧客目線で言い換えたようなアイディアになってしまい、本当の意味での顧客目線はできていません。
顧客目線で考える際のフレームワークとして、カスタマージャーニーマップは非常に有効なツールとなります。
・優先度マトリクス
(参照:優先度マトリクス)
ここまでは問題解決のアイディアを考えるためのツールでした。こうしたツールを使うことで、取り組むべき様々なアイディアが考えられるはずです。
そして、そのアイディアの中から、どれを優先的に行動に移していくか。その考え方のフレームワークが、優先度マトリクスです。
優先度マトリクスでは、「緊急・緊急でない」、「重要度が高い・高くない」で4分割した指標にアイディアを振り分けていきます。それによって今すぐ取り組むべきアイディア(緊急かつ重要度の高いもの)がはっきりします。
優先度マトリクスを使っていないと、効果の薄いものや時間がかかりすぎるものなどを選択しがちです。
生産性を上げるためには、問題解決のアイディアを考えるだけでなく、何を選択するかも重要なのです。
・ガントチャート
(参照:ガントチャート)
問題を理解し、解決のためのアイディアを考え、優先度を決めました。最後に行うのは実際の行動計画です。
アイディアを考えつく人は意外と大勢いますが、それを実行に移せる人は少ないのが実際のところです。それは、アイディアを実現可能な行動計画に移せていないからです。
ガントチャートは行動計画を作成するフレームワークです。目標地点から逆算し、さらに行動を細分化します。その上で誰がいつまでにその行動を行うのかを明確に可視化します。
【部下育成のためのマネジメント術|3つのステップで育てる】
ここまでで、仕事ができる部下になるための思考ツールをご紹介しました。
思考ツールを使ってビジネスを考えられるようになれば、いちいち細かく教えなくても自分で成長していきます。
方法を教えるだけなら誰でもできますが、習得させるにはしっかりとステップを用意してマネジメントしてあげなくてはいけません。
部下の指導法については、太平洋戦争時の海軍大臣である山本五十六がこんな名言を残しています。
口で説明しただけで教えた気になっているのは上司の傲慢です。まずは上司である皆さんが、部下を育てることを大事な仕事の1つとして認識しましょう。
OJTで勝手に育つと考えていてはいけません。しっかりと教育のための時間を確保するのです。
その上で、3つのステップで育成を進めていきます。山本五十六の言葉にあった内容を噛み砕いて3つのステップに昇華しました。
- 目標と課題を与える
- フィードバックをする
- 実際に任せる
詳しく解説します。
1、目標と課題を与える
人を育てるためにまず大事なことは「目指す姿をイメージさせること」です。人は自分の望んだものにしかなれません。
どういったことができる人間になりたいか。目指すべきビジネスマン像はどのような状態か。
このようないわゆる目標を持たせます。
そのためには、まず上司のみなさんの中で「部下にこうなってほしい」というイメージを持たなくてはいけません。
または、部下とのコミュニケーションの中で決めても良いでしょう。
目標が決まれば次に課題を考えます。現状と理想の間にある違いを認識し、それを埋めるための課題を考えさせましょう。
目標へのアプローチ方法や課題の設定方法として「now where分析」と「ロジックツリー」の考え方を伝え、自らで考えるように仕向けるといった感じです。
2、フィードバックをする
部下に課題を与えたら、それについてのフィードバックを行う時間を必ず設けるようにしましょう。
やらせるだけだと効果は薄まります。上司がフィードバックをしないなら手を抜いて中途半端にしか考えないからです。
最初にもお伝えしましたが、部下を育てることを大事な仕事の1つと位置付けましょう。
フィードバックをする上で重要なのは褒めることです。
「課題に対して良いアプローチができている!」
「これはビジネスのセンスがある!」
このような感じで褒めてあげましょう。褒めることには3つのメリットがあります。
中には、直接褒めるのが苦手な上司もいるでしょう。厳しく育てたいと考える人には違和感が残るかもしれません。
しかし、はっきり言って厳しく育てるのは効果的ではありません。褒めて育てたほうが良い仕事をするという研究結果は様々な機関が発表しています。
好きこそ物の上手なれ、得意こそものの上手なれ、です。「自分は仕事が出来る」と思って働かせた方が良い仕事ができやすくなるでしょう。
また、直接言うのが難しいなら、メールでフォローしたり、同僚を使って間接的に伝えるという方法もあります。
フィードバックを通してビジネス的思考術の成功体験を与えましょう。
3、実際に任せる(成功・失敗経験を積ませる)
3つ目のステップはステップ1とステップ2の繰り返しになります。
次は自分の目標ではなく、仕事をしていく上での課題を見つけさせます。
そして、課題へのアプローチ方法としてこの記事で紹介したようなフレームワークを伝授していくという流れです。
ここでも大事なのは、思考ツールを使わせた後にしっかりとフィードバックをすることです。
うまくいったことやいかなかったこと。改善や修正をすべきこと。
フィードバックを通して、しっかりと部下に成功体験と失敗体験を植え付けましょう。
ここまでは比較的、手取り足取り教えてあげるイメージが強いでしょう。しかし、この基礎部分を教えなければ部下はいつまでも成長できません。
社会に出たばかりの雛鳥が自分で飛べるようになるまでは、親が飛ぶ方法を教え、やり方を見せて、実際にやらせてあげなくてはいけません。山本五十六も同じようなことを言っていましたね。
しかし、この基礎部分を習得できれば、あとは自分で考えて仕事が出来るようになります。
早ければ数ヶ月でその状態までいくでしょう。いつまでも手がかかって仕方がない部下に愚痴を言い続けるのは、上司の働き方としても全く生産的ではありません。
部下を育成するためにはこうしたステップが不可欠です。
【部下育成のためには上司も成長しなければいけない】
これらが部下が勝手に育つようになるための思考ツールです。こうした思考ツールを与えてあげることが、本当の意味での仕事を教えるということです。
これまで作業しか教えていなかったという方は、この機会にぜひ育て方を見直してみてください。
部下が育つということは、みなさんにとっても仕事の生産性が大きく上がるきっかけになるはずです。
上司のみなさんが部下を育てるためには、自らも様々な仕事術を身につけておかねばなりません。自分の成長が部下の成長でもあります。
もし、ビジネスについてもっと体系的に学びを深めたいというのであれば、グロービス学び放題などのオンライン動画プラットフォームがおすすめです。
「ビジネススキルを身に付けたい。だけど、正直自分も何をすれば良いのかわかっていないし、勉強の時間も取れない。」そういう人は多いと思います。私もそうでした。
グロービス学び放題には300コース2500本を超える動画講座があります。初心者向けから専門性が高いものまで幅広く、数万円~数十万円のセミナーを受講するほどの価値があります。
映像での学習は書籍の数十倍の効果があると言われています。仕事に直結するスキルが体系的に学べるので、なんとなく売れているビジネス書を読むよりもコスパは高いと言えるでしょう。
ビジネスを学べる動画サイトについては以下の記事でも紹介しています。
ビジネスマンとしてのさらなる成長を求めて、勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
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