最近の本屋さんはつまらないと思っている方は多いのではないでしょうか。
どの本屋さんに行っても同じしょうな品揃え。テレビで紹介したものや映画化されたものばかりが雑多に並んでいて、読みたいと思える面白い本に出会える場所ではなくなってきている…。
実際に書店員として働く私自身ですらもそう感じていました。
しかし、実は全国にはオーナー独自の選書で他にない面白い品揃えをしている書店がいくつもあります。
「独立系書店」や「本のセレクトショップ」とも呼ばれるそうしたお店は、万人受けするようなお店ではないため大きな話題にはなりませんが、本好きのあなたであれば絶対に興味を持つようなお店ばかりです。
この記事では全国にある「本のセレクトショップ」や「ブックカフェ」、ちょっと前から話題になっている「泊まれる本屋」を紹介します。
オーナーのチョイスが光る面白い本屋さんを20か所紹介します。新しい本との出会いがほしいという方やお気に入りの本屋さんを見つけたい方はぜひ参考にしてみてください。
【厳しい?】本屋を個人で開業&経営するための9ステップ 書店の仕入れの方法や必要な資格を紹介
【本のセレクトショップ・独立系書店とは「個性あふれる面白い本屋」】
本のセレクトショップとは、書店員さんがおすすめしたい本をセレクトして販売している本屋のことです。
そう思われる方も多いと思いますが、実は違うのです。
ほとんどの書店は「配本」という仕組みのもとで本が入荷してきます。新刊が発売になるときには、お店の立地や規模、過去の販売実績に基づいて配本数が決定され、半分自動で入荷してきます。
話題の本などについては事前に希望冊数を伝えることもできますが、必ずしも希望通りの数が入荷してくるわけでもありません。
これはどこを切っても同じ顔が出てくる金太郎飴に例えて、「書店の金太郎飴化」とも言われています。
出版業界のこうした事情については「中田敦彦のYouTube大学」でも取り上げられています。あっちゃんがわかりやすく説明してくれているので、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
そうした慣習が蔓延る書店業界において、一種のアンチテーゼとして「本当に読んで欲しい本をお客さんに販売したい」というムーブメントが起こっています。
それが「本のセレクトショップ」や「独立系書店」と呼ばれるお店の誕生です。10年ほど前からポツポツと東京や京都などで誕生し、年々そうした特色のある書店が全国各地で生まれてきています。
この記事では20のお店に絞っての紹介になりますが、皆さんの住む地域にもあるかもしれませんのでぜひ探してみてくださいね。
【元書店員がおすすめする本のセレクトショップ】
まずは本のセレクトショップをご紹介します。きっと行ってみたい本屋さんが見つかるはずです。
・恵文社一条寺店(京都)
世界で一番美しい本屋10選にも選ばれたことがある本屋。本のセレクトショップの先駆者的存在で、全国からこの書店を目当てに本好きが集まっています。
私が本のセレクトショップと出会うきっかけになった場所ですし、行くたびに初めて見る新しい本との出会いがあります。
・本屋B&B(東京)
店名のB&Bは「Book&Beer」のこと。ビールが飲めたり、毎日のように作家や出版関係者を呼んでイベントをやっている独特なスタイルの本屋です。
「ふつうの新刊書店」とホームページには書いてありますが、幅広いジャンルの本を一点一点選んで仕入れてるので、他にない本に出会えます。
・誠光社(京都)
恵文社一条寺店で長年店長をされていた堀部篤史さんが2015年に独立して始められた書店。書店業界に新たな風を起こしています。
取次を介さず、出版社1社1社と直接契約をして本を仕入れるのが特徴。新刊はもちろんのこと、ZINEやリトルプレスなど普通の書店が扱いにくい幅広い本が揃っています。
・ブックスキューブリック(福岡)
九州を代表する本のセレクトショップで、選書の良さは全国の本好きの間で有名です。
また、本のイベント「ブックオカ」を主催したり、トークイベント、ギャラリーの併設など、本屋さんの新しいスタイルを懸命に作られています。
ホームページ
・天狼院書店(福岡、東京、京都、神奈川)
こだわりの選書だけが本のセレクトショップの特徴ではなくなってきています。天狼院書店では、読書会やライティングゼミ、カメラ部など、「一冊の本」から広がる楽しみを数多く提案されています。
本を再定義して新たな価値を生もうとする取り組みが非常に興味深いです。近くにあったら毎日行っちゃいそうな本屋さんです。
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・本屋Title(東京)
普通の小さな町の本屋さんの風貌の中に、独自の世界が広がっている新刊書店。生活をメインテーマに揃えられた本は、日常を少し良いものに変えるきっかけをくれます。
ホームページでは毎日おすすめの本を紹介してくださっており、それをチェックするのも楽しみ。店の2階はギャラリーになっており、イベントや展示会なども開催中です。
・Standard book store(大阪)
「本屋ですが、ベストセラーは置いていません。」このキャッチコピーの通り、個性ある選書が心地よい新刊書店。
売れる売れないにこだわらず、書店員がおすすめしたい本で棚を作っています。大阪に数店舗ありますが、それぞれで選書のスタイルも違って楽しめます。
ホームページ(オンラインストアもあります)
・文喫(東京)
2018年にオープンした「入場料のある本屋」。1500円の入場料を払って入った先には、3万冊を超える本当の出会いが待っています。
「本を選ぶ時間こそが至高の時間」。そんなコンセプトのもと、本を選ぶという体験を売っています。店内では椅子に座ったり軽食を楽しみながら本を楽しむことができ、気に入った本は購入も可能。全く新しい本屋のカタチを提案してくれます。
・蔦屋書店(全国)
一般書店とセレクト書店の良いところを合わせたスタイルで人気なのが蔦屋書店です。2020年現在全国16店舗を展開中。
「文化の牙城」や「オトナのライフスタイル」をメインテーマに、地域ごとで異なるコンセプトの選書がされています。知的好奇心がくすぐられる場所です。
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・Village Vanguard(全国)
遊べる本屋さんとして全国に数百店舗も展開している「Village Vangurard」。通称ヴィレヴァン。その見た目から雑貨屋だと思っている人も多いかもしれませんが、実は奥にはかなりの数の本が並んでいます。
村上春樹の本の隣にウイスキーの本が並んでいるように、ジャンルではなく「連想」で本が並んでいるので、次から次に読みたい本がつながっていきます。
イオンの中にあるお店だとファミリーや若い人向けになっているので少し面白みに欠けますが、愛知県にある本店や3号店など古き良きヴィレヴァンには骨太で非常に面白い本がたくさんありますよ。
ホームページ
【カフェを楽しみながら本も買える!全国のおすすめブックカフェ】
本のセレクトショップは何も本屋さんという形態だけではありません。コーヒーや食事を楽しみながら本も読むことができるブックカフェも「本のセレクトショップ」の一種と言えるでしょう。
ここで紹介するお店は、限られたスペースゆえにオーナーさんの思いが感じられる場所ばかりです。独立系書店と合わせてチェックしてみてください。
・Rainy Day Bookstore & Cafe(東京)
雑誌「Switch」や「Coyote」などを出版するSwitch Publishingが運営するブックカフェです。シックでオトナな空間は本を愉しむのに最適。一般流通していない珍しい本にも出会えます。
・かもめブックス(東京)
暖かな日差しが降り注ぐブックカフェ。こちらは校正・校閲の会社「鷗来堂」が運営されています。良い本を精一杯作られているからこそ、しっかりお客さんに届けたいという思いから本屋&カフェを始められました。
一冊一冊を丁寧に選書し、さらに様々なアプローチで新しい本との出会いを提供してくれます。
・fuzkue(東京)
「本の読める店を作りたい」。その思いからブックカフェを始められたオーナーなので、店づくりが独特です。
本を読むのに集中できるようにお客さん同士の会話やパソコンは基本的に禁止。料金体系も変動的な「席料+飲食料」で計算されます。
本を読むための最高の空間とはどういう場所なのか?本好きのオーナーが考え出した答えを確かめに行ってみるのも良いですね。
・book cafe 火星の庭(宮城)
仙台初のブックカフェ火星の庭はオープンして20年になります。スタイルとしてはカフェ×古本屋。
自分たちの置きたい本の他にもお客さんから買い取った本も多く、絶版になっている本や戦前に出版された本まで並んでいます。
買取まで行うと統一感のない雑多な棚になりがちですが、20年近くお店を続けてきた中でお客さんにも火星の庭の良さは伝わっているようで、「この店に合いそうだから持ってきた」という人が多いようです。
・本屋未満(長野)
古本の買取業者バリューブックスが運営するブックカフェ。2020年6月に旧NABOからリニューアルしました。棚には、「人生の隣人になるような本」をテーマに、古本だけでなく新刊も並びます。
バリューブックスでは1日に2万冊以上の買取本が届きますが、そのうちの1万冊は古紙回収に出されるといいます。
本屋未満には、読まれる価値があるのに処分されてしまう本が丁寧に拾い集められています。あと少しで一生出会えなくなるところだった一冊。そんな一冊との出会いがここにはあります。
・栞日(長野)
心地よい暮らしのヒントが集められた本屋。一般の書店で目にすることがない雑誌やアートブックも多く並んでいます。
本だけでなく雑貨にもこだわっており、「自分のお気に入りになる何か」と出会える場所です。毎年夏にALPS BOOK CAMPという大きな本のイベントも開催されています。
・acoustic book cafebar by(愛知)
元書店員の夫婦が、自分たちらしい本屋を作りたいという思いで始めたブックカフェ。
「本当の出会いで人生が変わった」という経験を持つオーナーが、同じように誰かにとってのかけがえのない一冊になってほしいという思いで選んだ本が並びます。普段あまり本を読まない人でも読みやすい本が多い印象。
本との出会いが人との出会いになるように、エッセイ本などが中心となった選書です。
・CAFE UNIZON(沖縄)
カフェ、雑貨屋、本屋が併設された沖縄のブックカフェ。カフェブームの始まった2005年にオープンしてからこれまで、沖縄における文化発信基地としての役割を持つほど地域で愛される場所になっています。
広い店内のあちこちに本が並び、ゆっくりとくつろげる席で自由に読むことができます。
沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
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【さらには泊まれる本屋も登場】
「本屋に泊まって一晩中本を読んで過ごしたい」。そんな願いを叶えてくれるのが「泊まれる本屋」です。まだまだ数は少ないですが、「ホテル×本のセレクトショップ」となっている場所を3つご紹介します。
・BOOK AND BED TOKYO(東京、京都、福岡)
「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」が選書した幅広いテーマの本が3500冊用意されています。
カプセルホテルのような空間「BUNK」と本棚の奥に用意された「BOOKSHELF」の2種類の宿泊プランがあります。高級ホテルのような快適さはないものの、本に囲まれて眠る最高の時間を過ごせます。
BOOK AND BED TOKYOの本は購入はできませんので、泊まる方は寝ない覚悟で行く必要があります。笑
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・ブックホテル 箱根本箱(神奈川)
雑誌「自遊人」が監修による「本に囲まれて暮らすように滞在する場所」。
そんなコンセプトのもとで作られた箱根本箱では、吹き抜けの壁一面の本棚やライフスタイルショップ、各部屋に用意された「あの人の本箱」など様々なアプローチでここでしか出会えない本を提案してくれます。
もちろん料理やお風呂も最高です。並んでいる本は全て購入も可能。
・LAMP LIGHT BOOKS HOTEL(愛知)
本の世界を旅するホテルをコンセプトに、24時間営業のブックカフェが併設されたホテルが名古屋に誕生しました。
こだわりの本を取り揃えた1階の本屋さんで読みたい本を選び、カフェや部屋に戻って読書を楽しむ。ホテルの部屋は調光が出来たり肘掛椅子があったりと読書に最適な空間です。
本好きにとって至高の非日常を楽しむことが出来る場所でしょう。
【各書店のおすすめ本はホームページやSNSでもチェックできる】
いかがでしたでしょうか。なかなか面白そうな本屋さんが多いですよね。
「行ってみたいけれど、自分の住んでいる場所から離れているから簡単には行けない」そんな人も多いと思いますし、私もそうでした。
特にSNSでは新入荷の注目本を紹介してくれるところも多いので、その書店に行けなくても面白い本と出会うことができます。
読んでみたい本が近くの本屋さんにはないかもしれませんが、取り寄せは近くの書店でも可能ですし、ネットで購入もできます。
直接は行けなくても面白い本と出会うきっかけは作れます。ぜひチェックしてみてください。
本のセレクトショップや独立系書店のスタイルは実は賛否両論あります。本の好みは人それぞれですので、オーナーや書店員の感性を押し付けられるように感じる人もいるでしょう。
ですが、本好きとしては書店業界の新たなムーブメントとして注目しておくべき流れだと思いますし、食わず嫌いになっているだけで実際に行くと面白い本に出会えるかもしれません。
興味を持った方はぜひチェックして行ってみてください。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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